鮭にぎり30貫の謎

寿司

サーモン、ください」
東京の寿司屋で隣り合わせた西洋人がを注文した。

僕は心でつぶやいた、から始めたか……。
寿司屋で他人が食べる順番を見るのは面白い。
鮪(まぐろ)から始める人もいれば、いかや白身もある。
この人はからか。
などと考えていたら、あっという間に2貫を平らげ、また注文した。
サーモン、ください」
またか。
よほど好きなんだね。

それも食べ終えるや、また「サーモン、ください」
そしてまた「サーモンください」、その次も「サーモン、ください」
僕が席に着いてから15分ぐらいしか経っていないが、この人はばかり20貫も食べた。

僕は寿司が好きでたまに食べに行くが、同じものはあまり注文しない。
違うを色々食べるのも、寿司の楽しみと思っているからだ。
ところが、この人はしか食べない。
何か特別な理由でもあるのだろうか?
願掛けでもしているのか?
お百度を踏むように、鮭を食べ続けているのだろうか?
疑問は膨(ふく)らむばかりで、とうとう我慢できなくなり話しかけた。

「鮭が好きなのですね」
「はい」
寿司はよく食べるのですか?」
「ええ、大好き」
「何が好きなのですか?」
「鮭です」
「他には?」
「いいえ、鮭が好きです」
「どうして鮭が好きなのですか?」
「おいしいからです」

話が噛(か)み合わないが、
僕はぜひとも知りたいのだ、鮭ばかり食べる理由を。

話を続けてようやくわかったことがある。
彼女はニュージーランド人で、日本に来る前から寿司が好きだったと言う。

「寿司が好きになったのはニュージーランドでですか?」
「ええ、そうです」
「鮭も?」
「はい、その通りです」
「ニュージーランドでは鮭以外を食べないのですか?」
「他の人は食べるけど、私は鮭が好き。だって、一番おいしいから」

別に特別な理由があるわけではないようだが、とにかく彼女は鮭を食べ続け、30貫を平らげて店を出ていった。

一人になった僕に、店員が話しかけてきた。
「お客さん、英語ができるんですね」
「まあね。それより、変わった客だったね」
「ええ。でも、外人さんは、変わった人が多いんですよ。昨日のお客さんなんか、醤油にわさびを溶かしてドロドロにしてました」
「辛いなんてもんじゃないね」
かっぱ巻きばっかり食べるお客さんもいました」
「なんだい、そりゃ?」
「ベジタリアンなんですって」
「それなら、かんぴょう巻きとか納豆巻きとかなんかもいいんじゃないの?」
「そういうのは嫌いなんだって、一緒にいらしてた方がおっしゃっていました」
「ずーっと、かっぱ巻きだけ?」
「ええ、10本ぐらい作りました」
「10本!  伝説の妖怪、河童は外国人のことだったのか!?」 

 もなか 記

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